良くない歯並び(不正咬合)の種類|上顎前突編

歯科コラム COLUMN

今回は、良くない歯並び(不正咬合)シリーズの第2回として、「上顎前突」について解説していきます。上顎前突というのは、いわゆる「出っ歯」と言われる症状です。下のグラフからも分かるように、日本人で2番目に多い不正咬合となっています。

※出典:厚生労働省 平成23年歯科疾患実態調査

欧米人から見て、日本人の歯並びのイメージとして強いのもこの上顎前突のようですね。矯正治療をお考えの方は、本コラムをぜひ参考にしてください。

上顎前突とは?

上顎前突とは、上の歯が下の歯よりも前に出過ぎた状態のこと。大きく分類すると、上の歯の傾斜によって出っ歯になっている場合(歯性の上顎前突)と、下顎に比べ上顎全体が大きく、上顎の歯茎と歯が前方に突き出ている場合(骨格性の上顎前突)があります。

上顎前突の原因

上の歯の傾斜によって出っ歯になっている「歯性の上顎前突」は、幼少期の指しゃぶりや舌で前歯を押すクセなどが原因となって起こります。継続的に力がかかることで、前歯が傾いてきてしまうのです。また、成長期に鼻や喉の病気で鼻呼吸ができず口呼吸をしていると、歯が前に出てきてしまうことがあります。これは、口呼吸のクセによって唇の筋肉に締まりがなくなってしまうためです。

一方、「骨格性の上顎前突」は、遺伝的な要因が大きいとされています。両親の上顎全体が大きい場合、また下顎が上顎に比べて小さい場合などは、その子供が出っ歯になりやすい傾向にあるようです。

上顎前突のリスク

不正咬合の大きなデメリットに「見た目の悪さ」があり、上顎前突も横顔のバランスが悪かったり、笑ったときに歯茎が目立ったりするため、それがコンプレックスになってしまう方も少なくありません。また、以下のように外見以外にも様々な問題があることはぜひ知っておきましょう。

・唇が閉じにくく、口呼吸になりがちなため、ドライマウス(口のなかが常に乾燥した状態)になりやすい
・ドライマウスになると唾液の分泌量が減少し(唾液が持つ抗菌力が低下し)、虫歯や歯周病になりやすい
・前歯が前に出ているため噛み合わせが悪くなり、食べ物をうまく噛み砕けない
・スポーツや事故のときに、前歯が折れたり唇が切れたりしやすい
・下顎を前にズラして噛むクセがつくため、顎の関節に負担がかかって顎関節症になりやすい

上顎前突の矯正治療

前歯が傾いている「歯性の上顎前突」の場合は、ワイヤー矯正や裏側矯正、インビザラインなどで歯を正しい位置に移動させるのが一般的。部分矯正で改善できるケースも多々あります。一方、上顎全体が大きい場合は、歯茎ごと内側に引っ込める必要があるため、全体的な矯正治療が必要になります。歯を移動させるスペースをつくるために、上の奥歯を抜歯しなければならないこともあります。

上顎前突の矯正治療は、前歯だけを引っ込めればいいように思えますが、実は奥歯の噛み合わせにズレがあるケースも多々あります。そのため、前歯だけでなく全体の噛み合わせを考慮して、バランスを改善していく必要があります。

上顎前突に限った話ではありませんが、早い時期に矯正治療を受けたほうが抜歯せずに改善できる可能性が高くなります。できるだけ早めに矯正相談を受けてみてくださいね。

次回は、「空隙歯列(すきっ歯)」について、原因やリスク、矯正治療方法など詳しく解説していきます。