良くない歯並び(不正咬合)の種類|過蓋咬合編

歯科コラム COLUMN

今回は、良くない歯並び(不正咬合)シリーズの第5回として、「過蓋咬合(かがいこうごう)」について解説していきます。過蓋咬合はそれほど多い不正歯列ではありませんが、顎関節症になるリスクが高く、年月の経過とともに悪化していく傾向があります。以下でご説明している症状に思い当たる方は、できるだけお早めに矯正治療をご検討ください。特に、お子様に過蓋咬合の症状がある場合は顎の骨の正常な成長を妨げるため、早期に歯科医院を受診することが大切です。

過蓋咬合とは?

過蓋咬合とは、上下の前歯の噛み合わせが深く、上の前歯が下の前歯を覆っている状態のことで、「ディープバイト」とも呼ばれます。

正常な噛み合わせの場合、「イー」と口を開けたとき、上の前歯は下の前歯を3分の1から4分の1(2~3mm)くらい覆っていますが、過蓋咬合の場合、下の前歯がほとんど見えないくらい上の前歯が極端に深く被さっています。

過蓋咬合の原因

他の不正咬合と同様に、過蓋咬合も遺伝による骨格・歯の異常が原因になります。歯の位置・傾きに異常がある場合、顎の骨の位置に異常がある場合、顎の骨の大きさがアンバランスな場合(下顎の成長不良・上顎の過成長)、前歯が過剰に伸びている場合、奥歯が通常より伸びておらず、高さが不足している場合など、様々なケースが考えられます。

後天的な原因としては、虫歯などで奥歯を抜いたまま放置していると噛み合わせの高さが低くなり、過蓋咬合になる場合があります。また、強い力で歯を噛みしめる、下唇を噛む・吸う、頬杖をつくなどの癖も過蓋咬合の原因になります。

過蓋咬合のリスク

過蓋咬合の人は、上の歯が下の歯に大きく被さっており、歯と歯の接触が著しいため下顎を動かしにくくなります。そうなると、慢性的に顎の関節に負担がかかり、口を開けにくくなったり、口を開けるときにカクカクと音がしたり、痛くて口を大きく開けられないといった症状を伴う「顎関節症」を発症することがあります。また、前歯同士が強く接触することで歯が極端にすり減りますし、重度になると、下の前歯が上顎の歯茎を傷付けて炎症を起こすケースもあります。

その他、咀嚼をしたり飲み込んだりする運動がうまくできない、発音がこもって聞き取りにくくなるなどの悪影響が出ることも少なくありません。外見的には、笑ったときに上の歯茎が見えやすくなるため、これをコンプレックスに感じる方もいらっしゃいます。また、どうしてもお口の中の清掃状態が悪くなりがちで、虫歯や歯周病、口臭を招きやすいのは他の不正咬合と同様です。

過蓋咬合の矯正治療

過蓋咬合の方は、一般的に年をとるごとにますます噛み合わせが深くなっていき、顎関節に与えるストレスも大きくなっていきます。そのため、できるだけ早期のうちに矯正治療を受けて、噛み合わせを整えることが重要です。お子様の場合は、まだ顎の骨の成長が見込める時期に矯正治療を受けるのが理想です。

過蓋咬合の矯正治療は、基本的に矯正装置で奥歯を引っ張って高さを増し、前歯を歯茎の方向(骨の方向)に入り込ませていくように移動させます。これによっ て、噛み合わせを浅くすることが可能です。

次回は、「下顎前突(受け口・反対咬合)」について、原因やリスク、矯正治療方法など詳しく解説していきます。