抜歯を避ける最終手段?根管治療は正しく根気よく

歯科コラム COLUMN

虫歯は、自覚症状がほとんどないまま少しずつ悪化していく病気です。「CO(初期段階の虫歯)」から「C4(歯根に達した虫歯)」に至る進行段階はすでにお伝えしましたが、虫歯がC4まで進んでしまうと歯を残すことが難しくなってしまいます。

大切な自分の歯を守るためには、C4まで悪化する前にしっかり治療をすることが重要です。今回は、虫歯が「C3(神経におよんだ虫歯)」まで進行してしまった場合でも、自分の歯を残すことができる「根管治療」についてご説明します。

根管治療で歯を残すことの重要性

根管治療の目的は、虫歯の進行を食い止めて歯を残すこと。具体的には、虫歯菌に感染した神経や血管を根管(歯根の中を通る細い管)から取り除き、根管内を無菌化することで歯根を維持します。

重度の虫歯になると、「痛いから抜いてほしい!」という方もいらっしゃいますが、歯を失うことはお口の健康を維持するうえで大きなリスクになるため注意が必要です。1本でも歯を失うと、そこからドミノのように歯が倒れて歯並びや噛み合わせが乱れていきます。そうなると、虫歯や歯周病にかかるリスクも高くなり、2本、3本と歯を失ってしまうケースも少なくありません。インプラントや入れ歯で補うこともできますが、自分の歯にはかないません。少しでも自分の歯を残せる可能性があるならその可能性を追求すべきであり、そのための一つの手段が根管治療というわけです。

根管治療を途中でやめてはいけません!

下記「治療の流れ」でご説明していますが、根管治療には多くのステップがあるため、通院回数も多くなります。根管治療を受けるにあたって大切なのは、最後まで通院してきちんと治すこと。「痛みがなくなったから」「仕事が忙しいから」といった理由で治療を中断してしまう方がいますが、これは非常に危険です。歯根の中に細菌が残ったままだと周囲に病巣が広がっていき、最悪の場合は抜歯が必要になるケースも・・・。これでは、歯を残すために行っている根管治療の意味がありません。初回の計画どおりに、最後まで根気よく通院するようにしましょう。

治療の流れ
STEP1 STEP2 STEP3
「ファイル」という細い針状の器具で、根管内から汚染された神経や血管をかき出す。 「プローブ」と呼ばれる目盛りがついた専用器具を使用して、根管の長さを測定する。 神経や血管を丁寧に除去したら、根管内を洗浄・消毒して無菌状態にする。
STEP4 STEP5 STEP6
根管内に薬剤を詰めて密封し、歯根を二次カリエス(虫歯の再発)から守る。 密封した蓋の上に、被せ物を装着するための土台(コア)を立てる。 土台の上に被せ物を装着し、噛み合わせを正しく整えたら治療完了。

グラントウキョウスワン歯科・矯正歯科 院長より

根管治療は、しばしば「建物の基礎工事」に例えられます。どんなにきれいなビルでも、基礎工事が不十分だと地震などで倒壊するリスクは高くなります。歯の土台を整える根管治療も同じことで、見た目の美しい被せ物を長持ちさせるためには強い土台をつくるための工事、つまり根管治療が重要になってくるのです。

重度の虫歯になると、耐え難いほどの激痛に襲われることがあります。その後、仮にその痛みが治まったとしても、それは神経が死んだことによる一時的なものでしかありません。早期の根管治療によって痛みによるストレスから解放され、ご自身の歯を残すことが可能になります。歯にズキッと痛みを感じたら、なるべく早めに歯科医院を受診しましょう。